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2004年12月26日に起きたスマトラ沖地震・津波でもっとも被害を受けたアチェ状況と支援活動について、インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)が伝えます。


by NINDJA
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●エリート・ボランティアと政治的ボランティア

<要旨>アチェで活動をおこなうインドネシアの団体Air Putihからの活動報告。アチェの被災者を支援しなくてはならないはずの役人たちが、大統領、閣僚、高官のアチェ訪問にばかり気をとられ、支援活動が進んでいない状況を伝える。

 災害が政治的チャンスになることは最初から懸念されていた。アチェの活動で、Air Putihボランティアは、その現実に直面することになった。
 真の英雄は犠牲者であり、生存者だ。ボランティアでも、役人でもない。ボランティアになることは、人道的な義務によって導かれるもので、ほかの目的のためではない。役人や政治家たちは、これが任務だからおこなわなくてはならないのだ。彼らは国家、つまり国民から給料を得ている。彼らが政治的義務と任務を果たしたからといって、英雄的なことでも何でもない。もし彼らが、自分たちを優先権を得るべきエリートと位置づけ、それによって、もっと重要な使命を帯びた人びとが出発を延期したり中止したりせざるを得ないことになるなら、いま苦しんでいるわたしたちの友人を裏切ることになるのだ。
 ハリム空港では、空軍機が、アチェに何をしに行くのか明らかでない役人ご一行様とエリート・ボランティアたちのため、必死で便宜を図っている。テレビがそれを取材すれば、万歳だ。メディアも、政治家に踊らされ、ジャーナリストとしての倫理を忘れている。いっぽうで数十人、数百人のボランティアは、いつ出発できるかもわからないまま、順番を待っている。それどころか、横柄な担当官に、一方的にキャンセルされたり、延期されたり、怒られたりしている。心身、そして財産をも投げ出そうとしているボランティアたちより、自分たちが優れているとでも考えているのだろうか。アチェの人びとは、一秒、一秒、自分たちの生命で支払わなくてはならないというのに、この国の役人は気づかないのだろうか。
 担当官たちは、いま大統領を含め、役人ご一行様のアチェ訪問のために忙しい。ただただ上司のため。人びとへの支援は放ったらかしだ。わたしは、多くのボランティアが、何時間も、何日も待ち続け、運ぶための支援物資を得るために空港に行ったり来たりするのに出会った。医薬品の配給は最優先課題なのに。ボランティアたちは、何の調整もなく、自分たちのイニシアティブで活動している。たとえばインドネシア赤十字チームは、必死で避難民の手当てをしている。避難民の状況は最悪だ。緊急テントでは収容しきれない。そして、そのすぐ近くに、たくさんのテントが役人ご一行様の訪問を支えるために積み上げられているのだ。
 さらに悲しいことに、すべての輸送手段―国軍のトラックも―は、大統領が訪問する地域周辺に集められている。そこでは、遺体も見えないところに置きなおされている。ものすごい努力で、道路も清められる。突然、電気も水も通信も、すべての施設が準備される。疑問なのは、では、なぜいままでやらなかったのか、ということだ。結局は、ただ役人が訪問するためだけなのか。
 制服を着たエリート・ボランティアたちの公認ポストは、特別の便宜を与えられているとも聞く。人びとが清潔な水を得られないでいるときに、彼らはマンディ(水浴び)をし、化粧をできるのだ。この1週間、完全に飢えている人びとの前で、平気で食べることもできるのだ。
 ボランティア、ジャーナリスト、そして海外のボランティアは、被災者とともに真剣に活動している。いつでも、わけのわからない利権が優先されるなかで、闘っている。わたしたちは、ボランティアと被災者自身がおこなってきた、そして現在もおこなっており、今後もおこないつづける活動をみて、本当に恥ずかしく感じている。わたしたちは何もできず、ここに来るのにふさわしくなかったと思うのだ。(Air Putih, 05/01/03)
by NINDJA | 2005-01-03 12:00 | 国軍の援助妨害